パナソニックもいいぞー!LUMIX S5II 1年使用レビュー

ちょうど1年前、当ブログでもファーストインプレッションを書きました。

発売当時はルミックス初の像面位相差ということやユーチューバーを起用した宣伝などで結構話題になりましたね。
実際よく売れていたようで、発売後2ヶ月経過しても量販店では品薄になっていたようです。
自分も昨年の4月に購入、その後他のカメラと比較しつつ1年間使用してきました。

前回のOM SYSTEM OM-1に続き「この1年間に購入した4台のカメラ」の2番手、1年間使用したLumix S5IIの再レビューになります。

サイズ・重量

Lumix S系はS1を筆頭に大きく・重いイメージですが、確かにS5IIも本体のみ重量657gと他社が500g台なのと比べると重いです。

Α7R4との比較。
こう見るとそこまで違いは感じないんですけど角ばっているせいですかね?実機を目の前に並べていると「やっぱりS5II大きいなぁ…」という印象です。

とある方の動画の検証ではS5IIは熱分散にとても優れた設計がされているようで、その辺も含めた真面目な設計がこのサイズ・重さに起因しているのではないかという仮説を立てていました。
そう考えると確かに納得できるところではあります…が願わくばもう少し軽いしてほしいところ。

大きいと言えばペンタ部はがっつり大きいです。
ここにはパナソニックの愛と夢とクーリングファンが搭載されています。
何でも公式発表で「40度の環境下4K60P撮影しても絶対に止まらない」という話なので、愛と夢というのもあながち間違いではないかと。

ただLumixのレンズに限って言えばS PRO以外ならフルサイズなのに小型・軽量なものが多く、実は他社より取り回しは軽く感じます。
何よりキットレンズの20-60mmが画角・画質共に優秀なので、旅先スナップ 等これ1本で完結するならば、むしろフルサイズの中では軽量の部類に入るのではないかと思ったりもします。

操作性

ボタン・ホイール

良好なボタン・ホイールの配置

ボタン・ホイールダイヤル・ジョイスティックと操作系は一般的な配置で揃っていますので、他メーカーからの乗り換えでも戸惑うことはないでしょう。

ソニー比になりますが、各コントロールがソニーのようにフラットではなく指で押した時のストロークがあるのと、背面面積が広い分ボタンの間隔が広く配置されているためファインダーを覗きながらの操作も迷いが少ないです。

あととても使いやすいなと思ったのがホイールダイヤルとメニューボタン。
ホイールが一段高く出っ張っているおかげで、ホイール面の角に指を当てても回るのでとても回しやすいですね。
あと左肩に配置されがちなメニューボタンホイールのセンターボタンになっているのも楽。
何気にメニューボタンは良く押すのでこれは有り難い!

その代わりに再生ボタンが右肩に行ってしまったのはちょっと残念なところではありますが…

操作感が家電ぽい

実際に触ってみないと表現しにくいところではあるのですが、操作系が全体的に白物家電ぽいんですよね。いや黒いですけど。

チープというか軽いというか、家電に例えるとオーディオよりテレビみたいな感じですかね。
これはボディの材質とか質感とかの影響もあるかもしれないです。
長年高価格帯のカメラを使ってきた方だとちょっとがっかりするかも知れません。

シャッターボタンはちょっと軽すぎ

これは人によっては…というところではありますが、シャッターボタンがすっごいフェザータッチです。自分の感覚だと半押しのつもりが全押しになってしまうことが度々ありました。

ボタンだけ押し比べてみるとそんなに違いは感じないんですがなんでしょうね。
半押し→全押しまでのストロークが少し短い気がします。

グリップ

中指から下が絞り込んだ形状になっていますが、側面の面積が広いのと親指の引っ掛かりが浅いので決して持ちやすい方ではないです。
そもそも本体が重いので「しっかり握らないと」と意識してしまいます。
正直女性の手には大きく、片手で持ち歩くのは厳しいと思います。

次世代機では軽量化なりグリップ形状の改善なりで改善して欲しいところです。

メニュー

文字情報が大きく迷わないメニュー構成

新・旧ソニー、オリンパスと3種類と比較しましたが、メニューはS5IIが一番使いやすいですね。

縦並びのメニューで3階層に分類されているのは新ソニーでも同じなんですが、S5IIは2階層目もアイコンのみとして最終的に選択する項目だけテキスト表示としています。
広いエリアを確保することでフォントを大きくでき、且つ目に入る文字情報を少なくすることで見やすいという、良くできたメニューだと思います。

パナソニックのUI職人が優秀というのもあるでしょうが、この辺のこだわりは家電屋としてのメーカーの方針が強いのかなと思います。
なんとなくですが、ソニーの場合「ガジェットとしてクールに!」という感じで決めてそうですしね…

オートフォーカス性能

自分はAF性能を必要としないので前回のレビューでも言及は避けましたが、今回は他機種との比較で少し触れたいと思います。

比較した機種は下記の3機種です。

  • SONY α7R4
  • SONY ZV-E1
  • OM SYSTEM OM-1

AFスピード・精度

スピードに関してはほぼ横並び。若干ソニー機が速い気もしなくはないですが、レンズや焦点距離によっても違うので何ともといったところ。
そもそもパナソニックもコントラストAFでも十分、というかそっちのほうが速かった印象すらあります。

AF精度についても同様に他社と比べて劣るようなことはないですね。
ただ低照度では合焦しにくいという話もありますので、厳しい環境では差が開くかも知れないです。

C-AF(追従性能)

最近のカメラで「AF性能」として評価の対象になるのはやはりここでしょう。
自分の使い方だと正直どうでも良いのですが…皆さんそんなに動き物を追いかける撮影をするんですかね?

要・不要はさておき、追従性能においてはソニー機がスピードも食いつきもダントツ高性能ですね。
特にAI AFを搭載したZV-E1が飛び抜けて良いので、それと比べるとS5IIはソニー機の2世代くらい前の性能という印象です。

ただ、追従するフォーカスポイントの動きが緩慢なのが遅いと感じる要因なので、ひょっとしたら追従はしてるのだけどプロセッサの処理が原因なのではとも思います。
何故かプレビューがボタンを押してから切り替わりに時間がかかったり待機電力の管理がシビアだったり、そのあたりもプロセッサ由来の問題かも知れません。
そもそもS5IIは初値からバーゲンプライスなのでプロセッサでコストを落としたとか、それとも半導体不足のあおりで高効率のプロセッサを採用できなかったとか。

仮にAFのアルゴリズムが足かせになっていないのなら、近日発売されると噂される次世代フラッグシップ機は期待できるかもしれないですね!

画質

「画質」と一括りでざっくり総括するならば、正直どのカメラもさほど変わりません。
センサーもソニー製という噂もありますしね。
強いて言うならば画素数による精細度の違いが出るくらいでしょうか。
そういう意味では現状中間に位置する2400画素のS5IIは精細さとノイズ処理のバランスが撮れた、スタンダードな画質と言えます。

モアレが出やすい

ローパスフィルターレスのため、ディテールはハッキリして良いのですが被写体に網状のものがあるとモアレが出やすいです。

パンチングメタルの装飾箇所にしっかりモアレが出てしまっています。
カリカリのレンズでこういう被写体を撮るなら少し気をつけたほうが良いかも。

LUMIXの画作り

S5II本体というより、キットレンズの「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」を使用した感想ですが、LUMIXブランドのレンズは柔らかい画作りが得意だと感じました。
キヤノン寄りの画作りで、被写体は花や女性など柔らかく表現したい被写体にマッチすると思います。

LUMIXレンズは少々露出をハイキーに振ったほうがライカ味のような雰囲気が引き立つので似合います。

このレンズは何より広角20mmが最大のメリットです。
16mmほどではないですが、パースの効いたダイナミックな構図で撮れます。
あとこのレンズ(というかルミックス)は赤が強調される傾向があるので、より車両の赤が映えて良い感じですね。

ルミックスのレンズはなんとなく白の階調の残し方とエッジの処理に特徴があると思います。
ギリギリ白飛びしそうな橋脚と背景の繋がりが自然に見えます。
このへんの軟調よりの特性が「ビデオっぽい」と言われる所以でもあるのでしょう。

最近他社も20mmスタートのレンズを揃えてきていますが、これだけ撮れるレンズがキットで付いてきてしかも安い!
パナソニックとしてはじゃんじゃんレンズを買って欲しいところでしょうが、正直このキットだけで完結しても十分楽しめます。

硬い画が撮りたいならシグマを

逆に車やバイクなど鉄っぽい硬質な被写体だとLUMIXではソフトすぎて向かないですが、Lマウントではカリカリな表現を得意なシグマのレンズも選べます。

F1.4開放でも合焦点はカリカリで、なだらかにボケていくこの感じがたまらない。
やっぱりこういう被写体はシグマがマッチしますね。

パナソニック・シグマ、あとライカもどれもクオリティの高い使えるレンズばかり。
レンズ本数は決して多くはないですが、メーカーによって個性の違うレンズを選べるのはLマウントの大きなメリットでしょう。

強力な手ぶれ補正

これは前回のレビューにてα7IIIと比較テストした結果を掲載しているので、そちらを御覧ください。

ソニー機はボディ内手ぶれ補正はあまり注力していないイメージがある(電子手ぶれ補正でカバーする方針かも)ので、スチルの補正はやっぱりパナソニックのほうが上じゃないですかね。

LUMIX S5IIレビューまとめ

S5IIの良い点

  • 2400万画素と精細度・高感度耐性の丁度よい画素数
  • ユーザーフレンドリーな操作性
  • 動画は10bit 4K60Pまで撮れる
  • フル規格のHDMI端子を搭載
  • 傾向としては動画よりだがスチルもしっかり撮れる
  • フルサイズとしては手ぶれ補正が強力
  • メーカーそれぞれの個性的なレンズが使える
  • 動画撮影時の熱対策が万全
  • とにかくレンズキットのコスパが良すぎる!
  • MC-21経由で4K動画撮影時にEFレンズでC-AFが使える

やっぱりフルサイズで低価格のオールラウンダーというポジションは、発売後1年経過した現在でもダントツでしょう
あと何気に大三元レンズが他社より安い(24-70mm F2.8が22万円!)のも、システムとしてステップアップを考えると大きなメリットですね。

S5IIの悪い点

  • エントリー機としては大きく重い
  • C-AFが他社と比較すると若干落ちる
  • 再生画面表示などプロセッサの処理に少しもたつきがある

サイズ以外は主に演算処理に関連する点は、価格差を考えるといたしかたなし、というところ。
ソニーのα7IVと15万円近い差がありますからね…差額で良いレンズ買ったほうが絶対幸せになれますよ。

性能偏重のカメラ選びはもったいない

Youtuberのせいでソニー偏重なデジイチ業界の昨今、どこからか
「パナソニックなんてだせーよな」
「ソニーのほうがおもしれーよなー」

という声も聞こえてきそうですが、パナソニックも良いんですよ!

カメラ比較で必ずやり玉に上げられるAF性能にしても、そもそも過剰なベンチマークのようなテストで上位のものしか買う価値がないみたいな風潮はなんとも歯がゆいですね。
確かにどうせ買うならば良いものを買いたいという志向は正しいです。
ただそれだけで多様性を否定するのはすごくもったいない話だと思います。

性能差でS5IIの優位性を証明できなければ、確かに「妥協」という話になるかも知れませんが、おそらくアマチュアカメラマンの95%くらいは納得できる性能を備えているカメラです。
レンズもLUMIXで揃えればパナソニックのカラーサイエンスは方向性が確立されているシステムですし、他メーカーと十分差別化できる個性があると思います。
その上でAFやセンサーサイズ・画素数という性能面を一旦置いておいて全て並列に並べ、目的や表現で検討すれば幸せなカメラ選びができるのだと思います。

カメラの購入を考えていてS5IIを候補に入れている方には是非、価格とか妥協とかの色眼鏡を外して比較検討してもらえると嬉しいかなと思います。
少なくともS5IIはその幸せな選択になり得る、良いカメラですよ!

今回比較したカメラ

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