以前OM-1レビューでも書きましたが、マウントアダプター経由で旧フォーサーズマウントレンズって結構使えるんです。
AFがきちんと機能するのはもちろん意外に速いし、OM SYSTEMのカメラに純正のマウントアダプタ・レンズの組み合わせならそれなりに現行機種の機能もカバーできたりします。
あと旧フォーサーズレンズはイメージサークルに余裕があり後玉も大きく、レンズの中央部のオイシイところだけ使う設計になっていたので素性が良いレンズ群なんですよね。
元フォーサーズマウント所有者の自分は幸い(?)死蔵していたレンズが3本あったので、今回はそのレンズから旧フォーサーズレンズの魅力を探っていきたいと思います。
目次
そもそも旧フォーサーズシステム(マウント)とは
デジタル一眼レフ黎明期に生まれた規格です。
現在のマイクロフォーサーズの先祖にあたる規格で、2008年にオリンパスとコダックによって提唱されました。
後にセンサーサイズは同じままマウント経とフランジバックを短縮、電気接点を追加したのがマイクロフォーサーズ規格になります。
マウントアダプター
m4/3はフォーサーズの派生した規格ということもあり、純正のマウントアダプターを使えばほぼ難なく旧規格のレンズにも対応できます。
ただオリンパスとパナソニックとで若干仕様に違いがあるのと、ボディ側の対応によってAF性能や挙動、使える機能に違いがあるようです。
オリンパス(OM SYSTEM)同士の組み合わせについては公式に情報が公開されています。
またオリンパスからMMF-1/2/3と3種類発売されていますが、材質と防塵・防滴の違いだけでどれも内部は同じようです。
あとはパナソニックから発売されている「DMW-MA1」も中身は変わらないようですね。
今回使用したレンズ
さて、今回使用するレンズは自分が所持している3本。
- OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5
- ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro
- ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
マウントアダプターはMMF-2を使用。
今回この3本だけを持って秋のコスモスを撮影に行ってきました。
サンプルは全てLightroom classicで現像。
露出調整とデフォルトのシャープネス40以外のレタッチはしていません。
OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5
フルサイズ換算28mm-108mmの標準ズームレンズです。
当時のレンズ群にはスタンダード・ハイグレード・スーパーハイグレードと3種のグレードが付与されていて、これはハイグレード。松竹梅からユーザーから竹レンズと呼ばれていました。
こちらは初期に販売されたI型で、標準ズームは追ってII型と12-60mmF2.8-4.0が発売されました。
一応防湿庫で保管していたのですが前玉に少しカビが発生していました。
あとピントリングが加水分解を起こしはじめていてベタベタしてます。
古いレンズですし経年劣化は仕方ないですね。
意外にコンパクト
サイズは12-40mmと比べて実はそんなに変わらず、系は一回り大きいですが長さはほとんど同じくらい。カメラに取り付けるとマウントアダプター分長くなってしまうのは仕方ないにしても、意外とコンパクトですね。
M4/3規格になってもセンサーサイズは同じですから、ある程度高額性能を担保すると同じようなサイズになるのかもしれません。
「OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5」撮影サンプル
現代レンズと違いソフトな描写
AFスピードは古い設計の為速くはないですが遅くもない。Eシステムの頃と遜色ないと思います。
あとF値が可変なので広角開放からズームしていくとカリカリと絞りが動く音がしますね。
写りは12-40mmと比べて合焦面でも若干ソフトな感じ。
今どきのレンズだと開放からカリカリシャープが前提みたいなものなので、そのあたりは一昔前のレンズという雰囲気はあります。
まぁF4まで絞ればシャープになるので使い方次第ということで。
あと今回のサンプルで逆光はテストしてないですが、コーティングが進化しているのでフリンジなどは出そうですね。
一眼レフ時代の雰囲気が漂う1本
色はオリンパスらしい、しっかり目の色が乗ってきます。
12-40mmと変わらないあたり、昔から一貫した設計思想があったことがうかがえます。
ワイド端でもF2.8、フルサイズでF5.6程度の被写界深度ということもありボケはザワつきます。
これはレンズというよりは規格の問題が大きいかな。
F値可変ですがテレ端F3.5と、実はF4固定の現行の12-45mmよりも明るさでは有利だったりします。
換算28mmスタート・可変F値と時代を感じるスペックなので今更あえて選ぶことはないと思いますが、写りもよくテレ端が換算108mmと長いのがちょっと嬉しい。
ほんのりやさしい、一眼レフ時代の雰囲気で撮れる一本です。
カリカリに疲れたら気分転換にどうでしょう?
マウントアダプタ込みの大きさを許容できれば悪くない選択肢だと思います。
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro
「銘玉」と呼ばれたフォーサーズ定番のマクロレンズ
ハイグレードクラスのフルサイズ換算100mm単焦点マクロ。
当時「銘玉」と人気を博したレンズです。
その異名に違わぬ描画とマクロに強いフォーサーズシステムとフィットして、花や昆虫・物撮りなどにユーザーから愛用されていました。
撮影倍率は0.5倍。ハーフマクロになります。
といってもフルサイズ換算だと倍になるので実質等倍マクロになります。
ちなみに35mmマクロのほうは1.0倍なので実質倍率2倍。焦点距離がやや短く取り回しが良さそうなのと評判は悪くなかったので機会があれば欲しい一本ではあります。
フォーカスが沈胴式なのでとてもコンパクト。
あと前玉が凹レンズという珍しいレンズでもあります。
電源オフでレンズが沈胴が戻らない
あとこれは注意が必要なのですが、何故かマウントアダプター経由だと電源オフ時に伸びたレンズが戻りません(笑
なので使ったら一度遠くにピントを合わせるか、MFでレンズを戻す必要があります。
OM-1だけの問題かも知れませんがこれはちょっといただけないですね。
ピントリングの加水分解
14-54mmもそうでしたが50mmマクロもピントリングが加水分解を起こしていてました。
こちらはどうしよもない状態だったのでゴムリングに交換しています。
EFレンズ用なのですが経はほぼ同じなので幅を合わせればフィットします。
カッターで削り落としてアルコール等で除去したらあとは巻きつけるだけ。
あとで14-54mmも補修しましたが経は同じもので使えました。
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro撮影サンプル
時代を感じさせない銘玉
ほぼ開放F2.0で撮影したのですが存外に近接、遠景ともにシャープによく写りますね。
令和の今でも銘玉の名に相応しい、時代を感じさせないレンズだと思いました。
換算100mmということでF4相当の被写界深度でも悪くないボケ具合。
フルサイズほど柔らかくないですが前ボケ、後ボケともに綺麗なボケ足です。
AFは遅いが旧フォーサーズでは一番のオススメレンズ
ただAFはやっぱり遅い。所謂ジーコジーコ系の駆動です。
AF-Cで追っていると風で花が揺れたときに追いつかず、アウトフォーカスになってしまうことがたびたびありましたので、花は少し絞って撮影したほうが良いかも知れないです。
あと逆光ではフリンジがそこそこ出ます。
ここはコーティングの良い現代レンズに1歩2歩譲るところでしょう。
かれこれ20年前のレンズなのでスペック面で少々劣るところはありますが描写は素晴らしい、現代でも全然通用する写り。
これから旧フォーサーズレンズを集めてみると考えている方にはまずオススメしたい一本です。
ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
スタンダードクラスの広角ズームレンズです。
青帯レンズでE-520など小型化路線に舵を切った頃のモデル。小型軽量の広角レンズで発売時にはちょっと話題になっていた憶えがあります。
現代でも十分コンパクトな広角レンズ
マイクロフォーサーズと比べると若干大きいですが、それでも小型レンズの部類に入るサイズ。出目金じゃないのでフィルター装着も可能です。
フルサイズ換算で18-36mm。広角定番の16mmよりは少し狭いですがこのくらいで十分でしょう。
尚、同スペックのマイクロフォーサーズ版も販売されています。
「ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6」撮影サンプル
ボディの進化で化けたレンズ
Eシステムで使ってたときもあまり良い印象がなかったので期待していませんでしたが、意外によく写りますね。
OM-1で使ってみて一番化けたレンズだと思いました。
古い設計の廉価モデルなので周辺が流れるのは仕方ないですが、歪みは広角端でもそこまで気にならない程度に抑えられています。
この頃はデジタル補正なんてなかったと思う(OM-1内にプロファイルがあるのかも疑問)ので、レンズだけでこれだけ歪まないのは優秀なんじゃないでしょうか。
F4スタートなのもあるのでしょうがシャープネスも良く、色乗りも良い。
最短撮影距離は0.25mで最大撮影倍率は0.12倍(フルサイズ換算0.24倍)なのでアオリ撮影の適性もあります。
広角の出番が少ないなら十分使えるレンズ
いや、期待していなかった分正直結構良かったです。
現行の9-18mmは使ったことないですが広角はこれで良いかな、と思える程度には満足の写りでした。
これ以上を求めるなら現行のProグレードじゃないですかね。
結論:旧フォーサーズレンズも全然使える
今だから発揮できる旧フォーサーズレンズの真価
今回死蔵していたレンズを3本持ち出して撮影してみたのですが、いずれのレンズもAFが少し遅いという弱点はあれど全然使えるレベルのレンズでした。
当時センサーの刷新がほとんどなく1000万画素前後をうろうろしていたボディのレンズですが、2000万画素でも役者不足を感じさせません。
むしろボディ側の性能が良くなったことで素性の良いレンズの真価が発揮できる環境が整ったのではないでしょうか。
他メーカーではレンズや型によって当たり外れが激しかったりしますが、20年経って改めて当時からのオリンパスの実直さを垣間見た思いです。
あまり使わない焦点域をカバーするには丁度よい選択
もちろん現行レンズのほうがモーターもコーティングも良いはずなのでわざわざ古いもので積極的に揃えることはオススメはしませんが、あまり使わない焦点域のレンズを旧マウントで揃える、というのは悪くないと選択じゃないでしょうか。
今回レビューしたレンズで言えばマクロと広角とかですかね。
マウントアダプター代は上乗せされますが、揃えるレンズの本数によってはコスパは良いと思います。
あと問題は価格。
オールドレンズの流行のあおりをうけてか中途半端に古いレンズも少し値上がりしているように見受けられます。
今回紹介したレンズも1万円前後なら買いじゃないでしょうかね。2万出せば現行の中古が買えそうですし。
もし処分するタイミングを失って旧フォーサーズレンズを死蔵している型は積極的に持ち出してみてはいかがでしょう?
意外な発見があるかもしれません!
https://digital-faq.jp.omsystem.com/faq/public/app/servlet/qadoc?QID=001527