キットレンズだけどしっかり写る!SONY FE28-60mm  F4-5.6 レビュー

ミラーレスになってボディはレフ機時代から考えると随分コンパクトになりました。
自分はソニーのZV-E1を使いだしてから小型機のサイズにすっかり慣れてしまい、ファインダー付きのサイズ感すら大きく感じる始末。
小ささ、軽さはやっぱり正義ですね。

そうなってくるとレンズも小さくしたくなるのが人情。いくら描写が良いといわれてもファインダーレス機にシグマのartなんて付けて持ち歩きたくなくなります。
何よりアンバランスなことこの上ない。

ということでズームレンズで小さく、何より安いソニーのFE28-60mmを購入してみました。
ZV-E1の他α7cでもレンズキットになっていた、ソニーのフルサイズの廉価レンズです。

先に結論から言うと、小さいながら十分写る良いレンズ。
とは言えソニーの最弱クラスのレンズですからGレンズなどのアッパーミドルと比べて劣るところがそれなりにあります。

サンプルを撮影してきましたので、実写データをまじえてこのレンズの使用感をレビューしていきます。

FE 28-60mm F4-5.6 SEL2860

α7cのレンズキットとして2020年10月発売。(レンズ単体としては2021年1月発売。)
レンズ単体の定価は66,000円。

比較対象にならないかも知れませんがパナソニックのキットズームである20-60mm F3.5-5.6が定価81,400円と、キットレンズと言えどそれなりにお高い価格になってきました。
一昔前のキットレンズと言えば3万円台とかでしたからね。

中古市場はというとバラしの中古がそこそこ出回っていて、メルカリ等ではは25,000円前後と手を伸ばしやすい価格です。
自分はメルカリの中古を20,000円で購入しました。

廉価なコンパクトズームレンズによくある、撮影前にグイっと回して繰り出タイプ。
これ回す方向がよく分からなくなるんですよね。
慣れですかねぇ…電動のほうが嬉しかった。

中途半端だけどギリギリ実用域な焦点距離

今どきの標準域ズーム24mmスタートが当たり前なので、必要が不要かはさておき28mmスタートは若干の寂しさはあります。対してテレ端は60mmですが、テレ端が70mmでも望遠というほどでもないですしあまり気にならないですね。

スナップでの「標準ズーム」として期待しているのは50mm前後ですから普段遣いの領分はとりあえずカバーしてるかな、という感じ。
旅行先のスナップなら20mmスタートとかの広角レンズを選択したほうが良いと思います。

F値は控えめ

F値はワイド端F4、テレ端F5.6。廉価ズームですし仕方ないですね。

暗所での明るさは欲しいところですがスナップではF4くらいまで絞るものなので、そういった用途では大きなデメリットにはならないでしょう。

フルサイズを感じさせないコンパクトさ

やっぱり最大のポイントはこのコンパクトさでしょう。
フルサイズなのにスモールフォーマットみたいなサイズ。

Α7c系やZV系のコンパクトなモデルにGレンズの24-105mmとか、いくら便利で画質が担保されているとはいえ常用はしたくないくらいアンバランスになります。

最近のGレンズが小さくなってきていますし、コンパクトボディのカテゴリを用意したソニーとしてはコンパクトなレンズのラインアップ拡充は命題なんでしょう。

幸いマウント系が小さくデジタル補正が進化している(あとはユーザーから許容されている)現状なので、レンズの小型化は以前よりは難しくないのかもしれません。

シャープで四隅も目立つ荒れもない

使ってみて感心したのは、小さいながら意外にもよく写るということ。
頼りな下げなその外観に反して、写真のクオリティに関してはしっかり担保しています。

シャープネスはほどほどにあり、四隅も目立つような荒れも見受けられません。
むしろ一昔前のキヤノンのLレンズのようなほどほどのシャープさが心地よいです。
切れ切れのsigma artなどはレンズで写真の印象が固定されてしまうので、いくぶん無個性なほうが現像しやすいとも思います。

昔の廉価キットレンズだとまぁ無惨なものが多かったですが、こういった低価格帯のレンズほどレンズ設計とデジタル技術は進化を実感できるのかも知れませんね。

歪曲収差はややあり

反面歪曲収差はそれなりにあります。
デジタル補正をかけていると思うのですが、パッと見て違和感を感じるくらいには歪みます。

広角レンズでもないですしレンズのコストがかかりそうな要素ですから仕方ないでしょう。

当然ながらエモさはない

高価格帯の「空気を写す」みたいな表現は望むべくもないですね。(「空気を写す」なんてオカルトだと考えている派ですが)
具体的に言うなら近影の被写体がバキバキにシャープで背景がフワっとボケるよみたいな、空気遠近のような切り分けみたいなのは苦手です。

フルサイズでテレ端60mmF5.6ですから距離を工夫すればそれなりには撮れますが、インスタ向けなどのエモい写真を撮るのは難しいですね。

あまり寄れないのでテーブルフォトには不向き

これは明らかな弱点だと思いますが最短撮影距離がワイド端で0.3mm、テレ端で0.45mm、最大撮影倍率で0.16倍と意外と寄れません。
感覚的には50mm単焦点みたいな感じ。

撮れないことはないんですがテーブルフォトとかにはちょっと不向きです。
エントリーユーザー向けのキットレンズなんですから、そこはもう少し頑張ってほしかったところ。

低~画素機には良いが高画素機は辛いかも

今回ボディはZV-E1で使っているのですが、不満あまりないくらいよく写ります。
ただ疑問に思うのは高画素機との組み合わせ。

現在手元に高画素機がないので判断できませんが、どうしてもコンパクトなサイズ故にレンズ性能のキャパシティがないと思われるので高画素機だとボディに負けるような気がします。
3000万画素くらいならイケるんじゃないかとは思うのですが、6000万画素クラスになるとどうなのかなと。

レンズキットはα7c2にはあってもα7crには用意されていないのはそういう理由もあるのかなと考えてみたりします。
そもそもボディの価格帯が違うので廉価ズームキットがないだけかも知れませんが…

サンプル写真

ZV-E1にFE28-60mmだけのお気軽セットで茨城まで小旅行に行ってみました。
写真は全てlightroomでRAW現像。一部ノイズ除去と露出・シャープネスを少し触ってます。

以下の写真はクリックで拡大表示できます。

霞ヶ浦湖畔にて。
F5.6でもフルサイズで距離があればそれなりにボケます。

あときちんとシャープに写るので後処理の必要もさほど感じません。
旅先のスナップならこれだけ写れば十分でしょう。

鹿島海軍飛行隊跡にて航空隊本庁舎。

分かるくらいには樽型に歪んでますね。
この辺は光学性能的に割り切る必要はあるかと。

本庁舎内。
やっぱり歪曲収差がちょっと気になりますね。

同じく飛行隊跡地にて。
パープルフリンジも見受けられないので逆光耐性は悪くなさそうです。

茨城空港にて。
元百里基地所属の戦闘機F-4EJ改です。

逆光だったので暗部(機体全体)をそこそこ持ち上げてます。
ボディがZV-E1ということもあるのかも知れませが色もニュートラルで自然な描写ですね。

鹿島神宮 一の鳥居。

F11まで絞った際の光芒はこんな感じ。
波打つ水面の描写も綺麗に描けてますね。

小型ボディに付けっぱなししたくなるレンズ

安いレンズなので欠点をいくらか挙げましたが、個人的にはとても満足できるレンズです。
そこそこ写ってコンパクト。もうこれだけで十分このレンズの意義は果たしている思います。

「そこそこ」と控えめに書きましたが、自分としては十分「しっかり写る」と言い直しても良いくらいによくできたレンズだと感じました。

F値が高いのでボケないとか、切れるようなシャープさがないとか表現の幅は狭いのは確かですがサイズだけを売りにした「なんちゃってレンズ」ではないことは確かだと思います。
点数をつけるのあれば70点くらい。十分合格点です。

欲を言えば28mmスタートの画角と最大倍率。
24mmスタートでもう少し寄れたら、これ1本で旅に出ても心配ないと思えますね。

まぁ常用ズームの最適解は20mmスタートのFE20-70mm F4 Gになるとは思いますが、お散歩スナップや単焦点メインの時の相棒ならばFE28-60mmでも十分役割を果たしてくれると感じました。

フラットに写真に向き合えるレンズ

高級レンズのようなシャッターを切るだけでエモくなるような味付けがない分、フラットに写真に向き合えるものだと考えさせられるレンズです。
安いキットレンズは…高をくくってしまいがちですが、使ってみると意外な発見があるものです。

「レンズに撮らされているな」と感じたら、少しグレードを落としたレンズを使ってみるのも良いかも知れませんよ。