ZV-E1は今が買い時
SONY ZV-E1、丁度1年前に先行して発売されたZV-E10の上位機として発表・販売されました。
ただZV-E10が実勢価格8万円に対し、ZV-E1は32万円とZV-E10からのステップアップとしては高すぎ。
VLOGカムなのでスチルの機能はバッサリ切り捨てられているし、正直どこに需要があるのか謎のカメラでした。
中古市場の大幅下落
そして2024年に入ったころ、ふと気になって中古相場を確認したら案の定大幅に下落して22万前後でごろごろ並んでいます。
リセールバリューに強いソニーでこんなに値を落とすのは珍しい。
ただ球数が多いのでそれなりに売れてたということなんでしょう。ちょっと意外でした。
また冬・春とキャッシュバックキャンペーンの対象商品になっていて、ZV-E1は3万キャッシュバック対象。ポイントバックを含めれば実質新品も23万前後で買える勢いです。
発売開始1年未満の機種がキャッシュバック対象になることも非常に珍しい。それくらい不人気機種ということですね。
今が適正価格では?
中身はほぼα7s3と同等ということなのでモノは良いと思うんですが、やっぱり新品30万は高すぎですよね。
ZVシリーズはエントリーユースのブランドだと思うので、高くても20万円くらいなのでは?とずっと思っていました。
そういう意味でようやく(早速?)適正価格まで落ちてきたと言ってもいいのではないかと、そんな考えに至り2024年の1月に購入してみました。
あと経験則ですがソニーのカメラはガッツリ落ちるとそこが底値で、そこから数年大きな値下がりはないと思います。
なので販売開始1年未満で程度の良い中古が揃っていてる今が買い時なのでは、というのも購入の理由です。
とんでもない超絶クセ強カメラ
カメラが到着してすぐに触り始めて、1時間もかからずに分かったことがあります。
これは良くも悪くもとんでもないカメラだ、と。
性能は優秀なんですがポンコツな面が目につくので、恐ろしく人を選びます。
これは確かに売れないし、買っても手放される訳だと、触ってみて実感しました。
ということで、今回は「この1年間に購入した4台のカメラ」のラストを飾る、ソニー最大の問題児、ZV-E1です。
補足として本機はVLOGカムですが、自分の用途はスチル7:動画3くらいの割合です。
目次
ボディ・操作感
ZV系列でおなじみのコンパクトなボディ。
「VLOGカム」という立ち位置でモード選択がスライド式、前ダイヤルはバッサリ切り捨てているのが特徴ですね。
ソニーはα7系、α7c系、α6000系、ZV系と4種もボディがあるのに全部キッチリコンセプトを持って差別化できているところがすごい。
「これをやるならコレを買えよ」「コレはこういうカメラだから割り切れよ」みたいな、得られるユーザー体験をデザインで表現してますよね。
ある意味ユーザーへの免罪符になってる気もしますが、マーケティング力がすごいと思わせる点です。
その辺、パナソニックだとコスト削減の意味もあるんでしょうがうまくないですよね。
「いくら小型でもカメラだったらコレは必要だろう」「これをやろうとするとどうしてもボディサイズが…」みたいな感じで、十全な機能を盛り込んだ結果ラインアップ棲み分けができていないような。いやとても良いことなんですけど、パナソニックはもう少しデザインにコンセプティブな要素が必要なのではないかと思います。
G9 proなんてS5IIとボディを共通化してしまっていますからね…
追記:この記事執筆後にlumix S9が販売されました。
色々賛否があったりソニーの後追い感もありますが、個人的にはパナソニックの英断だと思います。
ただファインダーは欲しかったかな。
グリップ
グリップなんて概念はありません。VLOGカムですから(笑
ただ軽量なこと・ボディが薄いことから手で包み込むようにホールドはできます。
ちなみにNEEWERのケージを装着するとボディの軽さも相まってとてもグリップ感が良くなります。若干重くなりすけどその分大きいレンズとのバランスが良いのと、ボディ保護も兼ねのでスチル重視の用途ならばそこそこオススメです。
操作系
後述しますが「カメラ」という前提で言うならばダメダメです。
α7系もそうですが、ここは本当にパナソニックを見習ってほしいところ。
メニュー
BIONZ X世代から刷新された縦型メニュー。
LUMIX S5IIのレビューでも触れましたが、同じ縦型メニューでもあちらのほうが洗練されていると思います。
ダイヤル1つで全ての項目を流せるのは良いですが、やっぱりデザイン先行なイメージですね。
使いやすさという意味では新旧さほど変わらないと思います。
画質・処理エンジン
寒色よりだったBIONZ Xよりはニュートラルになった感じ。
というかカラーサイエンスはパナソニックに寄ってきたイメージがあります。
「S-Cinetone」なんかが顕著で、logデータを見ていて「なんかS5IIと似てるな」と思ってパナのLUTを当てたら同じような色が戻ってきました(笑
懸念していた1200万画素の画質ですが、2000万画素機と比較ではほとんど気にならないですね。
面積比では約1/2になるんですが対角比だとさほど差がないというか、等倍表示しても一回り小さい程度です。
高画素機との比較だとやっぱり違いは出ますね。フルHDと4K/8Kテレビの違いのように、高画素機は画の緻密さというか立体感というか、没入感が違います。
ZV-E1の悪い点
このZV-E1に関しては先に悪い点を書いていきます。
これをカメラとして期待しているとガッカリポイントがとても多いです。
一応それらについて対応策もあるので付け加えていますが、購入時の初期設定では正直「何故このまま販売した?」というレベルの酷さです。
とても使いにくいインターフェイス
ソニーの小型機全般に言えることかも知れませんが、とにかくボタン類が押しづらいです。
ただでさえ狭い背面に、背の低いフラットなボタンが並んでいるのですから、使いやすい訳がないです。
まさに「ソニーのカメラはガジェット」を象徴するような 操作系です。
まぁ小型機ですし「ブイログカム」ですから、カメラとしての操作感を求めるのは無理だということで諦めましょう。
史上最悪のメニューボタン
ただZV-E1一番の問題は「MENU」ボタン。
これはどう考えてもおかしいと思います!
おそらく不用意に押さないようにとの配慮とか単純にカッコイイからなのか、ボタン周りがエンボス処理されていて恐ろしく押しにくいです。というかきっと押させる気がないです。
ただでさえ位置的に押しにくいのに、ボタンが沈み込んでいるので親指の腹が当たって全く押せません。
これまで使ってきたカメラどころか、機器のボタンの中でこれほど押しにくいボタンがあるのか、というほどお粗末なボタンです。
驚くほどの熱停止
「ZV-E1は熱停止しやすい」と噂では聞いていましたが、噂以上の熱停止っぷりです。
メニューを触っているだけで止まる
カメラが届いてから「まずはメニューを確認しよう」と5分〜10分くらい電源をつけっぱなしでメニューをいじってたら止まりました(笑
初めてのメニューだと設定を確認するでしょうから、意外にこの洗礼を浴びた人多いんじゃないですかね。
関東地方の1月、室内温度20度はなかったと思います。
バリアングルモニターを閉じた状態で使用していたために熱がこもったと思われますが…録画してた訳ではなくただメニューを触っていただけなのに、しかも冬なのにこの弱さはまさに異次元のレベルの熱対策でしょう。
無対策だと長回しできない
その後録画テストなどもしましたが、無対策だとやっぱりすぐ止まります。
4KでなくフルHD60Pでも30分は回らなかったと思います。
カメラの特性やら対応策やらを調べて使えばそれなりに回避はできますが、ユーザーのユーザーサポートがないとまともに使えないカメラって、そんなの物売るレベルではないでしょう…
なんで開発段階で問題にならなかったのか不思議でなりません。
「機能優先・デザイン・インパクト優先。とりあえず動けばいい。」というソニーのマーケティングが透けて見えます。
少なくとも熱対策についてはソニーを悪いところだけパッケージしたような、試作機みたいなカメラだと思います。
これまた先人が対策を考案されていて、
- バリアングルモニターは必ず開いて使用する
- 「自動電源OFF温度」は「高」に設定
この2つはほぼマストと言って良いと思います。
あとSDカードはできるだけ転送速度の速いものを選んだほうがプロセッサの処理を軽減できるという話もあります。
外付け冷却対策
長回しするなら外付けの冷却対策もマストだと思います。
ただ吸盤や非接触タイプのファンはあまり効果はなく、ボディに直接貼り付けて放熱面積を増やすほうが効果的のようです。
自分は 熱伝導シート付きのUSBファンを買いましたが、表面温度が全く上がらないので効果絶大。
ファンを回したくないなら大型ヒートシンクだけでも結構効果あるんじゃないですかね。
ストロボはギリギリ使える
そもそもこのVLOGカムのコンセプトから外れるので悪い点というほどでもないですが、ストロボの使用には制限があります。
ZV-E1はメカシャッターレスのためフラッシュ同調速度が1/60となっています。
(ちなみにOM-1は読み込み面積が小さいのと積層センサーということもあり電子シャッター時で1/100です。)
室内の物撮りならギリギリ使えるレベルですね。
もっとも、高感度耐性が高いので感度上げて対応するほうが手っ取り早い気もしますが。
ZV-E1の良い点
小型で手の届きやすいソニーの1200万画素モデル
おそらくZV-E1唯一にして絶対的なアドバンテージはこれです。
操作系がひどいだとか冗談みたいな熱停止とか、人によってはそんなデメリットを払拭できるほどの破壊力があります。
低照度に強いセンサー(だが高感度番長ではない)
ご存知のように低照度の環境で威力を発揮するセンサーですが、これは「高感度番長」とイコールではなく、低照度下の撮影時に画質の破綻が少ないというものです。
設定されたベースISO感度を超えると順当にノイズはのります。
確かに高画素機と比べれば間違いなくノイズは少ないんですが、2000万画素クラスと比較しても1段程度。LUMIX S5IIは「デュアルネイティブISO」を搭載しているので、S5IIのベースISO2000辺りではほぼ同等くらいになります。
単純に「高感度上げ上げ」なモデルだと考えて購入するとちょっと違うな、と感じるでしょう。
もちろんISO12800になると他機種との差は歴然となるので、このセンサーでノイズについて恩恵を得られるのは使い方によると考えます。
現時点でほぼ最強のオートフォーカス
AFについては現状最強クラスと言って良いでしょう。
Α7RV等ソニーの最新鋭機に搭載されているAI AFは速く的確に被写体を捉えてくれます。
以後のソニー製品には、おそらく発表の噂のあるZV-E10IIにも搭載されるでしょう。
ただ小さく密閉されたボディに高い演算処理させていることも熱停止の原因でしょうから、高機能が実用性をスポイルしている気がしてなりません。
堅実なパナソニックならばできても実装を見送ったんじゃないかな、とも思います。
かなり使える指向性マイク
カメラ上部に内蔵されたマイクは前後で指向性の設定ができます。
歩きながらの撮影で自分の声を大きく入れたい時は後方に、映像側に振りたい時は前方にと切り替えられます。
これがなかなか有能でしっかり指向性が働いています。
定点撮影でも、例えばファンを付けて後方にノイズが発生している場合、前方指向にしておくとノイズがかなり軽減されるので便利です。
SONY ZV-E1レビューまとめ
そんな訳でZV-E1の良い点・悪い点をまとめてみましたが、まず言えることは「全方向まるっと良いカメラ」では決してないということですね。
機能面・性能面では文句のつけようがない全部入りではあるけど、実用面では正直「未完成のテスト機」というのが自分の結論です。
実際使用してみて中古市場の球数の多さも納得、という感想でした。
ZV-E1の良い点
- SONYだけの低照度に強い1200万画素センサー搭載
- 最新鋭のオートフォーカスを搭載
- 現状ほぼフルスペックの動画撮影機能
- 指向性マイクを搭載
- これだけ詰まって小型・軽量ボディ
- 中古相場20万前半なら納得できるコストパフォーマンス
ZV-E1の悪い点
- インターフェイスがガジェット的で、カメラとしては使いにくい
- 無対策だとすぐ熱停止する
- メカシャッターレスなのでストロボ使用は限定的
- 新品価格が32万円とかなり高い
ZV-E1をオススメしたい人
- 比較的安価にα7sIIIを体験したい人
- 小型で高性能なカメラが欲しい人(ファインダーレスだけど)
- 日常VLOG的なショート動画を、高画質で気軽に撮りたい人
ZV-E1をオススメできない人
- 用途が静止画重視の人
- 長回し動画を撮影する人
- ライト層全般(価格と実用面に難がある)
ZV-E1は評価に迷うソニーの変態カメラ
このカメラは本当に評価に迷いますね…ものすごい尖ったプロダクトですよこれは。
ZVシリーズは本来「ライト層向けの動画撮影機」というコンセプトなのでしょうが、ZV-E1は価格も実用面もとってもエクストリームなので非常にアンビバレントな立ち位置にあるカメラです。
そもそもZV-E10からのステップアップ需要がどれだけあったのか分かりませんが、実勢価格で4倍も出せるライトユーザーはいないでしょう…
ただ部材の高い安いはともかく現状の中古相場は市場の相場感に近いと思うので、20万前半ならば購入を検討する価値は大いにアリ。
ロングセラーで高止まりなα7s3がどんなものかを体験するにはうってつけのカメラだと思います
変態カメラ好きにはオススメ
散々文句を語っておいて何ですが、こういうエッジのきいた製品は嫌いじゃないんですよね。
少なくともα7IVのような万人受けするカメラよりはそそられます(笑
ソニーの作るカメラですから、性能的には全く問題なし。というか逆に盛りすぎなくらいの高機能機。
メリットもあるが同じくらいデメリットもある問題作。ZV-E1はそんなカメラです。
用途がマッチしているか問題への対応ができるならこれ以上にないカメラになると思いますが、「キレイなブイログが撮れる!」という風評だけで手にすると痛い目を見かねないので、検討される際は気をつけましょう!
この問題にあたってとあるYoutuberさんが回避策を提示しています。
ホイールダイヤルの十字ボタンにメニューを開く設定(メニューまたはマイメニュー)することで、幾分使いやすくはなります。
自分もこの設定にして以後、一度もMENUボタンを押したことはないです。