今更OM-1「mark 1」を買う
1年前、こんな記事を書きました。
ここで「これからはLUMIX一本でいくぞ!」みたいなことを書いたのですが…ウソでした。
その後この1年カメラ選びに迷走した結果がこれ。
左から
- SONY ZV-E1
- OM SYSTEM OM-1
- SONY α7RIV
- LUMIX S5II
加えてこれを撮影しているGX7 markIIと、合計5台に増えてしまいました…
(ちなみに当時所持していたZV-E10は売却しました。)
まぁ色々触って自分の理想の1台を探そう!というコンセプトで残りは売却するつもりなんで計画通りではあるのですが…それにしても増やしすぎです。
万人受けするα7IVなどはあえて選ばなかったのでどれもなかなかの曲者揃い。
(せっかくなので今後全てのレビューを書いていく予定です。)
まず一番手は直近で購入した「OM SYSTEM OM-1」。
まださらっとしか触ってませんが、「今買うべきデジタルカメラ」の最有力候補の1台です!
目次
12年ぶりのオリンパス(OM SYSTEM)機
最初に買ったデジタル一眼カメラはオリンパスのE-500でした。
確か14-45レンズキットを中古で70,000円くらいで購入したと思います。
それからレンズを数本、E-3を購入してオリンパスと数年ともにしてきました。
それからマイクロフォーサーズに移行して最後の所持していたオリンパス機は「PEN mini E-PM2」。
低価格ながら「OM-D画質」と謳われた隠れた名機でした。
しかしその頃になるとデジカメの世はまさに大フルサイズ時代。
「フォーサーズなんてだせーよな」
「フルサイズのほうがおもしれーよなー」
という世間の声に流され、Canon 6Dを購入。
そこからはSONY α7III → LUMIX S5IIと、メイン機はフルサイズをリプレイスしていき現在に至ります。
一応GX7 mark2は残していたのでm/3/4は完全に切っていませんでしたが、今後メイン機としてフルサイズ以外を候補にするという考えはなかったです。
そう、これまでは…
なぜ今OM-1を購入したか
「中古価格がこなれていたから」ということ、この1年であれこれフルサイズを買ってみたけど出力結果はどれも同じようなものだったので「変わった選択肢を試してみたい」という理由からです。
中古で買えば手放す時も差額は小さいし、長期レンタル代だと思えば安いもの、という少々イカれた理論です。(だからこんなに増えた)
つまるところそこまで期待していなかったし、丁度mark2が販売されて気が向いていたという程度。
今更フォーサーズに戻ることを真剣に考えることなんてないだろう…そう思った時期もありました。
使ってみてどうだったか
まさに目からウロコとはこのこと。
ちょっと触っただけでべた惚れしてしまいました。
なにこれすげー良いカメラじゃん、と。
ただ第一印象で決めてしまうのはよくない。そもそも元フォーサーズですから、スモールフォーマットのデメリットは身にしみて理解しています。
そして幸いにも(不幸にも)手元にはキャラクターの違う3種のフルサイズカメラがあります。
しかも1200万画素、2000万画素、6000万画素とセンサー違いも揃っていますので、使い比べてみました。
その結果「やっぱすげー良いカメラじゃん!」という結論に至りました。
少なくとも自分の用途にはこれ以上になくマッチしていると思います。
それでは私がOM-1のどういう面に惚れ込んだかを書いていきます。
(フルサイズとの比較については別の機会にまとめます)
OM-1の良い点
専業カメラメーカーの造ったボディ
α7III以降、ソニーとパナソニックしか使っていなかったので久しぶりのカメラ屋のボディです。
やっぱり専業メーカーのボディはしっくりきますね。
しっかり握り込めるグリップ
小ぶりなボディながらしっかりしたグリップ。
ソニーもα7R4以降グリップ形状が改善しましたが、やっぱりこの辺は長年カメラを作っていた専業メーカーに一日の長があります。
結局ものづくりというのはUXとかエルゴノミクスとかデータとか最大公約数とかではなく、継承された職人の感覚とかの領域なんですかね。
とてもしっくりくるんです。
しっかり堅いボタン・ダイヤル
今どきのソニー筆頭のガジェット系(?)カメラと比べるとボタンと、特にダイヤル系がしっかり堅いです。これは賛否あるかもしれませんが、自分は好みの感触です。
LUMIX S5IIなんかはフワフワですから、そこから乗り換えたら堅焼きせんべいのようにカチカチです。
個人的にはダイヤルはこれくらい堅いほうが不意に動くこともないので良いですかね。
思うに昔カメラはそうそう買い替えるようなものでもなかったでしょうし、長い間使ってもヤれないように、使っている間に馴染むような、そういう思想がのっているのかもしれないなと勝手に思いを馳せてみたりします。
ちなみに最悪なのはソニーの小型機。
完全にデザインありきで作られていて使う側のことを一向に考えていないそのインターフェイスはひどいものです。
ただ電源スイッチだけはいただけない
OM系でお馴染みですが、なんとかしてほしいのは左肩の電源スイッチ。
おそらくフィルム巻き上げレバーの意匠をデザインに昇華したということなんでしょうが、これはやり過ぎ感がありますね。
一応AFレバーに置き換えるという回避手段も用意されていますが、ちょっとなぁ…という感じです。
ニュートラルな色が良い
LightroomでRAWを開いた瞬間に感じたのは偏りのないバランスの良い色だなぁという感想。
ソニーだと寒色より、パナソニックだと暖色よりに偏る傾向にあるのですが、OM-1は非常にニュートラルという印象です。
OM SYSTEM(オリンパス)の色は変わった?
なぜ他社が偏るのかはホワイトバランスの精度なのか、各社のカラーサイエンスの傾向なのかは分かりませんが、文字通り「メーカーの色」という認識で使ってきました。
でもOM-1のニュートラルは本当にニュートラルなんですよね。
まず色を見ただけで「今のOM SYSTEM(オリンパス)は変わったんだな」と感銘を受けました。
ハイレゾショットではフルサイズを超えるノイズ除去
通常撮影時はセンサーサイズなりのノイズ
まぁ物理的に不利なんですから、フルサイズ比だとやっぱりノイズは気になりますね。
同じ2000万画素クラスのフルサイズ機LUMIX S5IIと比べてその差はおおよそ2段分、m3/4のISO200がフルサイズのISO800相当。
以前から言われ続けている「2世代前のフルサイズ相当」という差はやっぱり埋まらないというのが正直なところでしょう。
しかしハイレゾショットで大化けする
ただ、これがハイレゾショットになると話が変わります。
どうやらライブコンプ機能も含めカメラ内の合成処理にあわせてノイズ処理が実行されているようで、手持ちハイレゾで5000万画素と高画素データになるにも関わらず驚くほどノイズが消えます。
高画素機との比較
以下6000万画素機のα7R4と5000万画素のOM-1ハイレゾショットの比較してみました。
条件はISO3200/F4です。
まずは原寸。
どちらもクリックで拡大できます。
左がα7R4で右がOM-1(ハイレゾ)です。どちらもF4 ISO3200で撮影。
縮小表示だとどちらもあまりノイズ感がないかも知れないです。
等倍付近でのノイズ比較。
左がα7R4で右がOM-1です。
ズルいくらいノイズが消えてます。
これだけ激しくノイズ除去したら塗り絵になるんじゃないの?と疑いたくもなるもの。
なので次はノイズが近い感度の比較です。
左がα7R4のISO1600で、右がOM-1のISO6400。
横着して払わなかった腰のスカートあたりのホコリが、ハイレゾ合成後もきっちり残しながらノイズ除去されたのが確認できます。
また太ももまわりの暗部を見ると、不自然な塗りつぶしにならないようノイズが残っていることも分かります。
この結果からα7R4比で2段分のノイズは有利と考えて良いでしょう。
中・低画素機との比較
以下、LUMIX S5II(2000万画素)とZV-E1(1200万画素)でノイズ量の近いものを並べてみました。
左がLUMIX S5IIのISO3200で、右がOM-1のISO6400。
左がZV-E1のISO3200で、右がOM-1のISO6400。
どちらもISO3200がOM-1のISO6400相当となりました。
ZV-E1のほうは1段変わると思ったんですが、ベースISOのステップに上がらないとアドバンテージがないんですかね?
ちなみに今回はどちらも実絞りF4で比較しましたが、フルサイズ側で同じ深度を求めるならばF8まで絞るので、当然差は開きます。
ノイズ処理は適切
改めて合成処理ですからどっかに無理が出るだろうと粗探ししてみたんですが、気になるような破綻は見られません。頭いいなー
ともあれ条件付きではありますが、ノイズ問題についてはフルサイズと肩を並べるところか超えてしまってた、という考えで間違いないでしょう。
普段遣いできるレベルのハイレゾショット
ノイズの話でも触れましたが、OM SYSTEM激推しのハイレゾショットについて。
OM-1からスチル撮影時にはRECボタンをデフォルトで設置するほど自信のある機能のようです。
「またオリンパスのビックリドッキリメカか」と高を括っていましたが、いざ使ってみると実用的な機能で驚きました。
この手の小手先の機能(失礼)は全く期待していなかったのですが、なんですかこれ。
単純に高画素化するだけでなくノイズ除去の特典までついてくるチート機能です!
画像合成による破綻なし
プレビューと等倍で確認しましたが、違和感はまったく感じないですね。
上の写真はハイレゾショットで撮影した画像です(クリックで拡大)
合成用データの撮影時間が1/20秒か1/60秒という話なので、被写体が動くと当然ブレます。
左側奥の釣り人や船がわずかにブレているのが分かります。
合成だからと言って画としての破綻は感じられない。
トリッキーな機能ではなく、しっかり実用レベルで完成された機能だと感じました。
条件を選ぶ機能ではある
ただ撮影時に複数ショット撮るので、被写体と撮影条件を選びます。
- 強力な手ぶれ補正があるものの、片手持ちで極端にボディを振るとさすがにブレてしまう可能性があること
- ハイレゾショットの撮影時間(公式発表はないようですが1/20秒か1/60秒らしい)の間動かない被写体
くらいでしょうか。
つまり風景や静物の撮影は全然イケるということです。
合成時間は約5秒
合成時間には5秒程度かかります。
α7R4でもロスレスRAWだと1,2秒かかりますし、そこは少し寛容な心が必要です。
それでもEM-1 mk3では10秒くらいかかったという話なので大きな進化です。
高画素フルサイズ殺しの機能
結論としてはハイレゾショットはデメリットどころかメリットしかない驚きの機能です。
シーンによってはボディ価格が2倍以上、本領発揮するレンズを選ぶ高画素フルサイズ機はもういらないかな。
あと6000万画素のα7R4のRAWデータが120MB程度なのに対し、5000万画素のハイレゾRAWが40MB程度に収まっているのもステキポイントです。
旧フォーサーズレンズでもAFが速い
OM-D EM-1が発売された当時、カメラ店で行われたメーカーの説明会に参加する機会がたまたまありました。
その時に「旧フォーサーズレンズでもフォーサーズ機並みにAFが速い」という話を聞いていたので、OM-1ではどうかなと思っていたのですが、その機能は切り捨てられずしっかり動きます。
手元に残っていたレンズは以下の3本。
- 14-54mm F2.8-3.5
- 50mm F2 macro
- 9-18mm F4-5.6
マウントアダプターはMMF-2を使用しましたが、どれも問題なくAF動作しました。
モーターの限界はありますが十分速く、しかも意外なことにスチル限定ですがAF-Cも追従も効きます!
ただ50mmマクロは「ジーコージーコー」するのでやっぱり遅いは遅いですが、思い入れがあって残していたレンズがまともに使えるのは嬉しいものです。
ちなみにGX7 mark2では一応動きはするのですが、コントラストAFだからか「チッチッチッチッ」と小刻みに寄せていく挙動で「とりあえず使える」という程度。
50mmマクロに至ってはまったく合わずマニュアル運用していました。
純正PROレンズ、特にPRO単焦点のクオリティが高い
OM-1が、というよりはOM SYSTEMの良い点ですが、純正PROレンズのクオリティが高いです。
パナソニックのレンズも良いのですが、やはりOM SYSEM純正の組み合わせの方がメーカーのキャラクターを引き出せていると感じます。
パナソニック、特にパナライカブランドが情緒に寄せた感じだとしたらOMは写実的なカッチリした感じでしょうか。画に力のある描写をします。
特にPROシリーズの単焦点が素晴らしい!
PROのズームレンズ群もパフォーマンスが高いですが、PRO単焦点はさらに精細でボケも綺麗。
そして画作りはメーカーとしての一貫性を保っているのでとても扱いやすいです。
ちょっとお高いレンズではありますがOM-1を使うなら是非便利ズームにプラスしてもう一本、PRO単焦点を使ってみてほしいです。
OM-1の悪い点
正直個人的に悪い点はほぼないと言って良いくらい良くできたカメラだと思うんですが、期待するものが違えばデメリットになります。
OM-1自体はソツなく仕上がっているプロダクトなので、良くも悪くもm3/4という規格自体の特性によるものです。
(サブ機にするには)重く大きい
フルサイズ機の小型化が進んでいる昨今、OM-1は本体のみ511gとソニーαシリーズとほぼ変わりません。
レンズ込みのシステムと考えれば当然軽くはなるんですが、小フォーマットのメリットがスポイルされているのは事実です。
ただその分質実剛健なビルドクオリティと操作レスポンスも良いので納得感のあるサイズでもあるので、それが許容できなければ下位モデルという選択肢もアリだと思います。
オールマイティではない
ハイレゾショットを絶賛しましたが、フルサイズのようにオールマイティではないです。
デジタル技術でも小フォーマットという物理的な制約の解消は難しいところがあります。
ある程度カメラを知っていれば周知の事だと思うので簡潔にまとめると
- 被写界深度が深い
- ダイナミックレンジが狭い
の2点です。
被写界深度が深い(ボケない)
被写界深度については物撮りやマクロなど、ボケさせたくない場合にはメリットにはなるんですが、使用者側に選択肢がないという意味ではデメリットです。
ただボケは被写体・背景の距離にもよるのでF2.8もあればマイクロフォーサーズでもそれなりにボケ表現は使えます。
あとはF1.2など明るいレンズを揃えるとかですが、その辺は高価格帯のレンズになりますしエモい写真はフルサイズに分業したほうが良いと思います。
ダイナミックレンジが狭い
ダイナミックレンジについてはRAW現像時に失敗を取り戻したり、意図的に印象を変えたりという自由度の幅が狭いという点で不利ということだけなので、適正露出で(若しくは意図的に)撮影すれば全く問題ないです。
具体的に例を挙げると
少々ハイキーで撮影した写真をlightroomで露出を下げるとこうなります。
背景の空や葉の光が反射している箇所の開帳情報が残っていないので白く潰れてしまってますね。
ちなみに違う写真ですがα7R4だと
これを同様に現像で露出を落とすと
撮影時に白飛びしていた箇所も情報が残っているので、現像時に表現を変更することができます。
どちらにしても写真のクオリティに影響するということではないので、捉え方次第ではデメリットになるという認識ですが、フルサイズ・APS-Cしか知らないと「聞いてはいたけどこんなにも!」となりかねないので注意すべき点ではあります。
AF設定と動作が独特
直近ではソニーとパナソニックしか使っていないのと、設定を理解していないだけなのか分からないんですが、なんか独特な挙動をします。
まずC-AFについて、AFスピードは速いほうだと思います。また精度も良く、追従もしっかりしてくれます。
ただソニー機では画面内から撮影者の意図してると思われる被写体・部位に自動的に合わせてくれるのに対し、OM-1は「惜しいけどそこじゃないんだよね」みたいなところに合うことが多い気がします。
あと画面タッチ操作でフォーカスポイントを合わせて同じ構図で露出を変えた撮影する時、ソニー・パナ機ではフォーカスポイントを維持してくれるのですが、OM-1だとシャッターを切る度にリセットされます。
※ファームウェアver1.7でフォーカスポイントが維持されるようになりました
鳥撮影されてる方の口コミを見ると、被写体認識の設定をしていても手前にあるものにAFが合焦してしまうとか少し難があるように感じます。
ファームウェアver.1.7でAFの挙動が改善されました!
・意図した被写体へのフォーカスの打率が上がった。
・タッチフォーカスの維持されるようになった。
・C-AF時にピントが抜けたら戻ってこなくなるような現象がかなり改善された。
とは言えソニーのAI-AF機と比べるといま一歩で及びませんが、体感的にソニーの前世代機くらいにはなったので、AFに関するストレスはほぼなくなりました。
OM SYSTEMさんありがとう!
物撮り・風景撮りの最適解になりうる素晴らしいカメラ
まだ使用して1週間程度、所持しているカメラと比較・検証した上でのファーストインプレッションではありますが、AFなどまだ荒削りな点はあるものの完成度が高くとても良いカメラという感想です。
少なくとも偏見を持っていたセンサーサイズの差がデメリットであるという考えを払拭し、スモールフォーマットは個性として認知しても良いレベルには仕上がっているカメラだと思います。
このレビュー執筆時点で既に2年が経過して先日mark2が発売されましたが、正直こんなに良いカメラだとは思いもよりませんでした。
まぁオリンパスは新製品が出る度に「もう撮れない世界はない」みたいな大風呂敷を広げるようなキャッチコピーをつけてたりしたんで、ユーザーから見放されていた気もしなくはないですが…自分はそうでした。
中古相場150,000円前後(2024年4月現在)はかなり「買い」なカメラ
発売から2年経過とマーク2発売の影響もあって、中古相場は150,000円前後とかなり安くなっています。
マイクロフォーサーズはレンズも安いですし、12-40mm F2.8も中古で揃えれば20万でお釣りが来ます。
2型も出ましたが防水性能の向上程度のようなので、1型でも十分だと思います。
フルサイズに拘りがない、用途がマッチしているならかなり「買い」だと思いますよ!
ユーザーに配慮した「手触り」が一番の評価ポイントかも
あとふわっとした印象になるのですが、OM-1が届いて最初に触って、ファインダーを覗いて、シャッターを押して、現像までの過程で全然違和感というかひっかかりみたいなものを感じなかったんですよね。
まるでこれまで使い込んできたような、当たり前のような作業というのでしょうか。
この1年間で合計6機種を使ってきましたが、必ずなにかしらの引っかかりがありました。
操作系で言えばソニーは背面のサブダイヤルが回しづらいとか、S5IIは撮影プレビューが遅いとか、ZV-E1は操作系が全部クソだとか…
色がニュートラルだというのは先述しましたが、OM-1は撮影体験もニュートラルなイメージで、「カメラとはまずこうあるべきだ」という前提から設計されてるのではないかと思います。
開発者のインタビューでEVF についても単純に明るく・精細にというだけでなく、ヒューマンテストを繰り返し「使っていて疲れないファインダー」に調整したと話していました。
そういう道具として様々な面でユーザーに配慮した「手触り」が、OM-1で一番評価されるべきポイントなのかも知れないです。
ようやく時代が追いついた理想のフォーサーズ機
確か旧フォーサーズのコンセプトは以下のようだったと思います。
- 小フォーマットによりレンズの小型化とパフォーマンス上昇
- センサー部材の小型化による低コスト化
- デジタル処理による画質補完
フィルム時代にハーフカメラを造っていたオリンパスですから、そのノウハウが活かせるというのがスタートだったのかも知れません。
ただレンズのパフォーマンス以外は他社との優位性を見出すことができず、格下のカメラというレッテルを払拭することができないままでした。
しかしマイクロフォーサーズに舵取りした後はフォーサーズ時代の理念に立ち返り、小フォーマットの物理制約を手ブレ補正と読み込みスピードというメリットに転化し、デジタル処理を特化させることでフォーマットサイズに依存しない、ユニーク(一意)なカメラというポジションに仕上げていったかも知れません。
残念ながらカメラメーカーとしてのオリンパスは幕を引いてしまいましたが、最後に設計しOMDSが発表したOM-1で、ようやくフォーサーズの理想が結実したのではないかと思います。(自分が知らないだけでもう少し前の段階で仕上がっていたのかも知れませんが)
Olympus E-1発売から約20年、ようやく「フォーサーズ機」が完成した、そう考えると元フォーサーズユーザーとして感慨深いものがあります。
「コンピュテーショナルフォトグラフィー」について
あとオリンパス時代からの悪い癖で「コンピュテーショナルフォトグラフィー」とか言う胡散臭いスローガンはどうかとは思いますが、デジタル処理のウエイトを上げていくことは未来のカメラのカタチだと思っています。
自分的にはスマホでボケを描写するとか過度な介入は正直どうかと思わなくもないですが、きっとそれは老害の戯言です。
そもそもカメラがデジタル化した時点でカメラはコンピュータに入力するデバイスになったんです。デジタル処理の介入が進むのは当然の道筋でしょう。
そんな進化・多彩化したデジタル処理や高速化した電子シャッターなど、OM-1はカメラのデジタルデバイス化を比較的お手軽に肌で感じることができると思います。
そもそも実用的なボディ内手ぶれ補正とかライブビューとかピクチャーコントロールなど、今のデジタル一眼に搭載されている基本機能のさきがけはオリンパスだったりします。
実は昔からオリンパス時代から体質は変わっていないのかも知れません。
今度デジカメをどんなデバイスに昇華させていくのかの鍵を握っているのは、案外ハードウェア面で業界を席巻しているソニーではなくOM SYSTEMかも知れないですね。
OM-1レビューまとめ(総評)
これまでに挙げたものも含めて、OM-1の感想をまとめました。
(一部集めた情報から推測したものも含めていますが、おそらく正しいと思います。)
良いところ
- グリップ・操作系がしっかりしていて使いやすい
- 色がニュートラル(ホワイトバランスが良いのか?)
- 積層センサー搭載で読み込みが速く、ほぼ電子シャッターでいける
- 電子シャッターでもストロボ同調1/100秒までいける
- ハイレゾショットがフルサイズ高画素機キラー
- ハイレゾショットのノイズ感がフルサイズ同等(以上)
- これまでのm3/4のような線の太さを感じない(フルサイズ比較で画に差を感じない)
- AFが速い(問題もあるが)
- もちろん強力な手ぶれ補正
- ライブND/震度合成.ライブコンプなど機能満載
- 物撮りに小フォーマットはメリットになる(F値が小さくても被写界深度が稼げる)
- 旧フォーサーズレンズがまともに動く
- 中古がこなれてきてお買い得
悪いところ
- マイクロフォーサーズ機にしては大きく重い
- 小フォーマット故にボケにくい
- 通常撮影時のノイズはフォーマットサイズなりに出る(フルサイズ比2段分くらい)
AFの挙動に疑問あり※ファームアップで改善- フルサイズに比べて柔らかい表現には不向き(エモいのは苦手)
OM-1(マイクロフォーサーズ)をオススメしたい人
- カメラの使用経験がありマニュアル撮影を理解している人
- 風景・物撮りメインでボケをあまり必要としない人
- レンズ含めてシステムをコンパクトにしたい人
OM-1(マイクロフォーサーズ)がオススメできない人
- 初めてデジタル一眼を購入する人
- 人物撮影等ボケを多用する人
- レンズ含めたシステムのサイズを気にしない人
フルサイズのようにオールマイティではないけどアマチュアおいては80%くらいはカバーできるし、用途がマッチすれば150%楽しめる、そんなカメラだと思います。
ただ初心者の方は型落ちでも良いので最初はフルサイズをオススメします。
価格的・サイズ的には初めてのデジイチがフォーサーズというのは入りやすいかとは思いますが、まずは制約のない環境でマニュアル露出や現像を理解して、それから自分の用途が合えばマイクロフォーサーズを選択肢に入れるほうが、長く趣味としてカメラと付き合えるのではないかと思います。
ボディはやや大きく重いが、レンズ込みのシステムとしてはフルサイズ比で小型軽量なので持ち運びの負担は軽減。
もう「そこそこ」とは呼ばせない画質の良さ。
もうボケにくいくらいしかケチをつけところがないくらい、フォーサーズ規格が成熟したと思わせてくれる名機です。
私もそうでしたがOM-1はフルサイズ信仰の強い人、小フォーマットに偏見を持っている人ほど是非一度使って欲しいカメラです!
ちょっと話が横道にそれます。
色について語ると個人差が強く出るし、オカルトじみてくるので話半分・個人の心象という感じで読んでいただきたい。(そもそもレンズによって色も変わるし、あくまで自分が使用した構成での印象ということで。)
まずソニーが青いのは周知の事実だと思っています。(新エンジン後はパナ寄りになったけどやっぱり少し青い)。
硬質な被写体ではそれが活きるし、文字通りクールな写りが受け入れられているからのシェアなのかも知れないですが、忠実かと言われればほんの少しだけズレてる気がする。
G9以降のパナの「色が良い」という評判も使ってみるとちょっと違う。
「記憶色」というより印象に寄った「印象色」というイメージ。
それでOM SYSTEM、というより旧オリンパスのこれまでの印象なのですが、ビビット寄りのイメージでした。
おそらく「オリンパスブルー」という旗を振ったメーカーの方向性によるものだったのかなと。
(そもそもオリンパスブルーの由来は初期の旧フォーサーズ機に搭載されたコダックCCDが青空をより青く描画する特徴からユーザーが「コダックブルー」と読んでいたものを「オリンパスブルー」と読み替えて立てたコンセプトだったと記憶しています。)
まぁいずれにしても当時の「オリンパスブルー」は副産物的に発生した特性がコンセプトに入れ替わってしまって、それにメーカーもユーザーも乗っかってしまった、イデオロギーに乏しいカラーサイエンスだったんじゃないかと思ってます。
あ、ちなみに自分は旧フォーサーズユーザーで、初めてのデジイチはE-500でした。
それ故にマイノリティーだったフォーサーズユーザーの歯がゆさと、「オリンパスブルー」というアイデンティティにすがっていた当時のユーザーの気持ちが痛いほどよく分かるのです。