ミラーレスカメラの変遷と現在

カメラのトレンドを創ったマイクロフォーサーズ

2017年1月にニコンのリストラが報道されカメラ業界に衝撃が走りましたが、続けざまに先日ミラーレスカメラ「Nikon 1 V3」のディスコンが発表されました。
長らくキヤノンと二強を誇っていたニコンの凋落。対して真っ先に消えると考えられていたマイクロフォーサーズ陣の攻勢(正確には一度消えてますが)。
この2社(2陣)の現在を分けたのは、ほぼ間違いなくレンズ交換式カメラの小型(ミラーレス化)への取り組みでしょう。

ただ「先見の明があった」というわけではなく「ミラーレスカメラというトレンドを創った」というほうが正しいように思います。
加えて「所詮コンパクトなサブ機」から「メインたりうる実力機」への着実な進化と変化、そしてレンズラインアップの充実をたゆまず進めてきた企業努力があってこそ。
今回は改めてミラーレスカメラの変遷を辿ってみたいと思います。

ミラーレス黎明期

初のマイクロフォーサーズ機「DMC-G1」が発売された9年前。
発表から間をおかず発売されましたのが印象的でした。

当時は今以上にセンサーサイズによる画質の格差があり、フルサイズおよびAPS-Cがスタンダードの一眼レフ業界においてフォーサーズ(Eマウント)を採用していたオリンパス・パナソニックは不利な立場にありました。
またセンサーサイズの小ささを活かした小型化にも当時のマウント経では限界があったため、マウント経を小さくしてミラー機構を撤廃した規格としてパナソニック主導でマイクロフォーサーズ規格が誕生しました。

ただ第一号機のG1は正直小型化を売りにしている割にそれほど小さくもない。
またフォーサーズのネックになっていたセンサーも刷新されず据え置き。
EVFやバリアングル液晶などレンズ交換式としては革新性はありましたが機能的にまだまだ未成熟な点と、画質面やAFでも実を伴わない(少なくともセールスポイントにはならない)、加えて小さいレンズへの偏見もあり、カメラ愛好家からは好意的に受け取られていなかったと思われます。
正直発表当時ミラーレスカメラがここまで普及すると考えていた人がどれだけいたのでしょうか。

システムの小型化とレンズの充実

早々に一眼レフを捨てミラーレスへ舵を取ったパナソニックに続き、フォーサーズ規格を発足したオリンパスもフラッグシップ機「E-5」を最後にその流れに追従します。
フォーサーズ規格の終焉宣言はマイクロフォーサーズのフラッグシップ機「OMD-EM1」の発表まで待つこととなるのですが、実質的な終焉はこの時となり発売予定のフォーサーズレンズのロードマップも白紙になりました。

カメラメーカーのマウント変更は禁断の一手であり、ユーザーの切り捨てと同義。
当初既存ユーザーは2ラインで進めるものと考えていましたが、メーカー側のフェードアウトしていく様を見せられて「やられた・・・」と思ったことでしょう。

ただメーカー側としては既存マウントでは二強であるキヤノン・ニコンに太刀打ちできない為、小型センサーサイズを利点を活かせるカメラの小型化に活路を見出すしかなかったのは事実。
こうして生き残りをかけてオリンパス・パナソニック両者はマイクロフォーサーズシステムの拡充に邁進していきます。

オリンパス・ソニーの提携が大きなターニングポイント

その後パナソニックからGFシリーズ、オリンパスからはPENシリーズと小型ミラーレスカメラを続々と発表。
小型でレンズ交換式、コンパクトカメラより「そこそこ」画質が良いということで、ライトユーザーにむけて徐々に浸透していきます。
ただ肝心の新型センサーが開発されず、結果1つのパナソニック製センサーを3年あまりも使い続けることになります。
しかもエントリーモデルからフラッグシップ(E-5)まで全ラインアップで同じサイズの同じセンサー。
中身は同じ、ボディデザインと付加機能だけのモデルチェンジにシェアは低迷の一方でした。

そんな先行きの不安な状況に一石を投じたのが、オリンパスとソニーの業務提携のニュースでした。
これによりデジタルカメラ界でトップシェアを誇るソニー製センサーがオリンパス機に搭載される事となり、画質が劇的に改善。
初めて実装されたのが「OMD EM5」だったことから以後販売されたソニーセンサー搭載機は「OMD画質」と呼ばれ好評を博します。

その後パナソニックもソニーに比類する新型センサーを開発。
オリンパス、ソニーの業務提携が起爆剤となってマイクロフォーサーズ全体の画質が底上げされ、「小型だけど十分な画質のマイクロフォーサーズ」という認知を獲得するに至りました。

ミラーレスの現在。そして追い上げるソニー

そして現在のミラーレスはメインストリームとなり、各社参入する市場となりました。
ヤノン・ニコンなど古参のカメラメーカーが慎重に動向を伺っていましたが、その他のメーカーはミラーレスカメラを次々と発表していきます。
富士フィルムはミラーレスからレンズ交換式デジタルカメラをラインアップ、ペンタックスからもミニチュアサイズのQシリーズが販売されました。

そんな中でも積極的に商品開発を進めたのはやはりソニーでしょう。
NEXシリーズでミラーレス初のAPS-C機を皮切りに、フルサイズのα7シリーズまで発売。
ミラーレスだけで2つのマウントシステムを併売しています。
個人的にはミラーレスフルサイズ機はオリンパスに出してほしかった…

ミラーレスでAPS-Cサイズのセンサーが売りでしたが、参入当初はそのセンサーサイズの大きさによる画質の甘さもさることながら、レンズ群の寂しさもあり評判はイマイチでした。
ただ現在は画質の改善とAF性能、これまでパナソニックが顧客のメインストリームとしてきた動画性能の向上、レンズラインアップの拡充によりミラーレスカテゴリのシェアをじりじりと伸ばしてきています。

マイクロフォーサーズ贔屓の自分ですが、ミラーレスにフルサイズを搭載してしまう思い切りや技術の先進性、ミラーレスに軸足をおいても既存の一眼レフユーザーを切り捨てない姿勢などから、ソニーならマイクロフォーサーズ陣がやってくれなかった(できなかった)事をやってくれるんじゃないかと期待させられます。
カメラ愛好家界隈ではメーカー(マウント)乗り換えのことを「宗旨変え」と呼んだりしますが、ソニーなら宗旨変えを検討しても良いかなと。

このままソニーの猛進が続くのか、マイクロフォーサーズ陣が次の一手を打ってでるのか、はたまた強国キヤノンが反撃にでるのか、今後もミラーレスカメラの動向に注目したいところですね。

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